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特色

多摩美術大学大学院 博士前期課程の門をたたく諸君のために


「就職できなかったし」、「もう少し描ければと思って」、本学大学院博士前期課程の門をたたく人もいることだろう。しかし本来、博士課程はそのような学生の受け入れのためにあるのではない。ではどういうところなのか。それは学部で学んだ知識や技術にいっそうの磨きをかけるとともに、芸術や社会について幅広く考えることのできる芸術家や理論家を養成するところなのだ。

「制作には熱い魂があればよい」とはしばしば耳にする言葉である。熱い魂、それは芸術活動の原動力になる強い制作動機であるだろうし、描きたい、造りたい、という抑えられない気持ちでもあるかもしれない。

と同時に、この熱い魂はコンクールに落選した、とか、一般的な仕事につくことになったなど、さまざまな状況に左右されて冷めやすい、自分の意志ではコントロールがむずかしいものでもある。ではそれを熱いままに保つにはどうすればよいのだろうか。 ひとつの方法は、いつも問題意識を持つことだ。そう、「問題意識」。なんとなくむずかしそうな言葉だが、要するに「この作品を見ていると心が躍るのはなぜなんだろう」「私は青が大好きだけど、昔の画家は青をどうやって効果的に使っているのか」など、美術を愛する人なら誰もがいつも考えているようなことなのだ。ところが、そうした問題はたいていそのままになっていて、いつのまにか忘れられてしまっているものでもある。

そこでこうした問題に積極的に取り組んで、自分なりに答えを探してみてはどうだろう。問いと答えのキャッチボールを積み重ねていくうちに、いつしか芸術に対する姿勢が自分なりにはっきりしてくるはずだ。そうすれば、めまぐるしく動く現代社会の状況のなかでも、いつまでも芸術を愛する熱い魂を持ち続けることができるにちがいない。自分の気持ちを客観的に眺める視点を持つことができるようになれば、自分を見失うことなく、専門的な知識や技術を社会の中で前進的に生かしていくことができるのではないだろうか。

本学博士前期課程はそうした皆さんを応援する。「なぜ私は制作をするのか」「デザインすることにどんな意味があるのか」といった、奥の深い問題を思いっきり自分にぶつけてみよう。視野が広くなり、いい感じで自信がついてきたら、さらに専門的な問いかけをするために、博士後期課程に進学する道も開けている。